あの「ダースベイダー」が日本にやってくるという。悪の帝王に日本を滅ぼされる訳にはいかない。ジェダイの騎士がいない今、奴を止めるのは僕しかいない。「ダースベイダー」をこの手で倒す!
なんとダースベイダーは、ご丁寧に来る場所と時間を予告してきた。東武デパートの屋上に、13時に現れるという。それまでに奴を倒す術を考えなくては。スターウォーズでの戦いといえば、不思議な力「フォース」を使ってのバトルだ。しかしこの短時間でフォースを身につけることは難しい。教えてくれるヨーダはもういないのだ。
やばい、これでは日本ものともダークサイドに落ちてしまう。そうなる前にフォースを身につけなければ。フォース、フォース、フォース……!?
フォー酢!!!!
4本の酢、これで「フォー酢」! 異論は認めない。このフォー酢でベイダーを倒す! 時間まであと10分。デパートの屋上には、ベイダーと写真を撮るために人が集まる。おいおい、みんな丸腰じゃないか。一撃で殺られるぞ。
(写真 僕なりのフォース)
デパートの係員によれば、ベイダーとの写真撮影は順番に一枚のみ。みんな並んでいるので、勝負は一瞬で付けねばならない。緊張で手に汗がにじむ。ここで新たな不安が頭をよぎる。4本の酢、すなわちフォー酢をかばんから出したところで、係員に止められないだろうか? 冷静に考えると、酢を持ってベイダーに近づく僕は相当怪しい。ベイダーに殺られる前に、係員に別室に連れて行かれるのではないか。
デーンデーンデーンデデデーデーデデー♪ デーンデーンデーンデーデデーデーデデー♪
「来たっ! ダースベイダーだ!」
人々が一斉にベイダーに銃を……と思いきやカメラを向けた。写真を撮ってfacebookに上げてる場合ではないぞ! 命が惜しくないのか?
係員が一人ずつ壇上に人々を上げて行く。ああ、ベイダーの生贄になってしまう。女性がベイダーに捕まった! 銃をはなせ! 危ない、逃げろ!
ハアハア……。なんとか助かったようだ。これ以上ベイダーを野放しにする訳にはいかない。俺のフォー酢でお前を倒す!
ついに僕の番がきた。カメラを係員に渡し、かばんから4本の酢を取り出す。よし、係員には止められなかった。ダースベイダーの目の前に立ち、勢いよくフォー酢をかざす。
「くらえ! 俺なりの……フォー酢!!!!」
「……シュコー? シュコー?」
しまった! フォー酢の意味がまるで通じていない! ベイダーきょとんとしてる……。
「はい終わりで~す。次の方どうぞ~」。