インターネット小説 炎上家の人々 第一話「steady gift」

 僕には大好きな女の子がいる。同級生の関口さんだ。喋ったことはないけれど、彼女のブログはかかさずチェックしている。国語の授業があまりに退屈だったので、スマホで関口さんのブログを見ることにした。更新されてる! イヤッホゥウウ!


 しかし今日更新された彼女のブログは、衝撃的だった。要約するとこうだ。
「アタシは美容代に毎月7万円使ってる。でも今月はお金が無くて『よもぎ蒸し』にも行けない! フルプミー!」

 7万円という金額に僕は初めあっけに取られたけど、関口さんほどの美貌を保つためには7万円は必要経費だと納得した。『よもぎ蒸し』の意味も、グーグル先生に聞いて理解した。

 彼女を助けてあげたい。僕は使命感に燃えていた。やる気に満ち満ちていたが、財布の中はなけなしの2千円だけ。どうしよう……。なんとか関口さんに7万円をあげたい。昼休みの屋上で流れる雲を見ていたら、起死回生のアイデアがひらめいた。

 それはネットで寄付をつのり、集めたお金を関口さんに渡すというアイデアだ。リアルでは友達のいない僕だが、ネット上にはたくさんの友人がいる。彼らに協力してもらおう。僕は学校を早退して部屋にこもり、facebookの友人たちと一緒にサイト制作に打ち込んだ。

 できた! 三日間の徹夜の末、ついに関口さんへの寄付をつのるサイトができあがった。サイトの名前は「steady gift」。世界でたったひとりの愛するステディ、関口さんへ贈り物をしたいという、素直な気持ちで名付けた。

 「steady gift」にはこう書いた。僕には大好きな女の子がいて、彼女は月に7万円美容代に使っています。だけど今月はお金がなくて、美容にお金を使えないのです。本当は僕が払ってあげればよいのですが、お金がありません。アルバイトも学校で禁止されています。どうか僕のステディのために、寄付をお願いできないでしょうか。ぶしつけなお願いだとは分かっています。それでも僕は、彼女にずっときれいでいて欲しいのです。

 サイトをアップしてから数時間後、驚くべきことがおきた。「steady gift」に寄付が10万円以上集まっていたのだ。目標をクリアしたのであわててサイトにお礼のメッセージを掲げた。Facebookからのいいね!は1万を超え、なんとyahooニュースにまで「steady gift」の話がのっていた。サイトを見た女性からは「本当に彼女のことが好きなんですね、応援しています」というメールがたくさん届いている。

 涙が出るほど嬉しかった。これで関口さんが美しくいられる。中には「美容代に7万円なんて高すぎる」といった口汚い批判もあったけれど、関口さんのためなら僕は何を言われたってかまわない。

 次の日学校で、僕は初めて関口さんに話しかけた。
「せ、関口さん」
「んっ……? アシナガくん、だっけ?」
「はいそうです。さっき関口さんのかばんから、この封筒が落ちたよ」
「私のじゃないと思うけど……」
「たしかに関口さんのかばんから落ちたよ。中身を確認してくれる?」
「分かった……。えっ? ああっ、本当だ私のだ。ありがとうアシナガくん」

 お金を受け取ったときの、関口さんの顔が忘れられない。驚きと欲望の混ざった、なんともいい笑顔だった。これで関口さんはもっと美しくなれる。次の日学校へ行くと、関口さんの肌はつやつやしていて、美しさがさらに増していた。僕はたまらなく嬉しくなって関口さんのブログを開けてみる。もしかしたら僕の話が書いてあるかもしれない。更新されてる! イヤッホゥウウ~! ウウウ!?

 今日更新されたブログをみて、僕の頭は真っ白になった。
「アタシは彼氏とのラブホ代に、毎月10万使ってる。昨日も行ったからもうお金がなくて、今月これ以上行けない! 助けて足長おじさん! ヘルプミー!」

 やれやれ、また「steady gift」を再開しないといけない。

※この小説は虚構です。虚構ですが、新聞ではありません。ブログです。

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