僕はダウンタウンの松っちゃんが好きだ。その松本監督の最新映画『さや侍』が公開されたと知りすぐに観にいく。過去の『大日本人』『しんぼる』も映画館で観て度肝を抜かれた。万人にすすめられる作品ではないが、他の映画とは絶対にかぶらないオリジナリティに強くひかれた。『さや侍』でも何かかましてくれるはず。わくわくしながら上映を待つ。
ストーリーはざっくり言うと、罪人の侍が30日の間に若ぎみを笑わせば無罪放免、失敗すれば切腹というもの。主演の侍を演じるのはなんと素人のオッサン、野見隆明。笑わせようと芸をするシーンはとても演技しているようには見えず、思いもよらないリアクションに何度か笑う。
野見さんのリアクションは演技と思えないはずだ。公式サイトの松本監督インタビューによれば、なんと野見さんには映画ということを知らせずに撮影したとのこと。台本もなく、笑わせようと芸をするシーンはアドリブ。監督が松本さんということすら教えず、撮影がすべて終わってから台本を渡したそうだ。
野見さんの素のリアクションに笑うが、どんなに無茶な芸にも真剣に取り組む姿勢と表情に目がしらが熱くなるシーンもあった。
ラストが近づくにつれ、僕は心配になった。今までの松本監督の映画は、ラストシーンにとんでもないことをしでかすからだ。そこにひかれてもいるのだが、今回はどうか。周りで笑ってみているちびっこもいるので、勝手に心配していた。
心配は半分的中し、半分は意外なものだった。笑っていたちびっこも声をなくしたが、最後にはまた笑っていた。ラストシーンはぜひ映画館でその目でみて欲しい。エンドロールにもひと笑い仕掛けてあり、出ないと言っていた松本監督も出てくるので最後まで席を立たないように。
『さや侍』は、『大日本人』『しんぼる』に比べると内容は分かりやすく、笑いどころも多かった。松本監督の映画はいつも実験的だが、素人の野見さんを使った今回の実験は成功したと思う。